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【小説】塩野七生「ローマ人の物語」危機と克服,賢帝の世紀:古代

ローマ人の物語 (8) 危機と克服

紹介

 ローマ開闢以来のここ数百年と同じく、いつものようにローマに危機が訪れる。
 だが今回の危機がいつもと違ったのは、スキピオもスッラもカエサルアウグストゥスもそこにはいなかったこと。
 カリグラやネロの治世がかわいらしく思えるほどに無能な皇帝たちによって、ローマの秩序は崩壊した。
 ところで、ヴィテリウスとヴェスパシアヌスは前線に出なかったことでは同じなのに、なんだか解釈が妙に後者に都合が良くないですか?

紹介

 やはり馬鹿どもの内乱より賢帝の治世を読むほうが面白い。
 雨後の筍のごとく現れた皇帝たちの中で、生き残ったのは、健全な常識人たるヴェスパシアヌスだった。
 事あるごとに常識人であったことが強調される彼だが、皇帝法やその健全な統治、増税に依らない財政再建をみてみると、きっとすごく臆病な人だったんじゃないかと思う。長所とされる愛嬌あふれる言動もその現れっぽい。
 だが政治家は臆病なくらいのほうがいいのだ。そしていよいよローマを蝕み始めたユダヤとキリストの影も本巻の見どころ

紹介

 災害復興に追われてすぐに死んだ、父親そっくりの善人ティトゥス帝。
 ティベリウスに憧れて強権的な政治を執ったが、身内に足元を掬われて所詮はティベリウスのパチモンにしかなれなかったドミティアヌス帝。
 そして不動の中継ぎリリーフ、ネルウァ帝。
 「治世が2年なら誰でも賢帝でいられる」とか、ガルバ・オトー・ヴィテリウスを見たあとに言えるんだから喉元過ぎれば熱さを忘れるとはまさにこのこと。

書誌情報

著者:塩野七生
タイトル:ローマ人の物語 (8) 危機と克服
出版社:新潮社
出版年:1999.9
備考:初版では第8巻。新潮文庫化時に21,22,23巻に分巻。

ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀

紹介

 至高の皇帝こと、トライアヌスの時代。
 あまりにも優等生すぎてちょっと中だるみ。精力的な建築、人間の育成による国家運営への情熱、貴族的な立ち居ふるまいに、百年ぶりの領土拡大遠征は、なんとなく神君アウグストゥスの政治を彷彿とさせる。最後の遠征でケチがついたところまでアウグストゥスを踏襲。
 資料の不足のせいなのか、本巻はモヤかかったような記述が多くてやや筆致が鈍ったような気がするのが残念。パルティア遠征のイマイチぶりと、ユダヤの反旗を許した部分は、至高の呼び声にちょっと疑問を感じなくもない。

紹介

 豪腕のトライアヌスに比べ、堅実で誠実な組織運営の市村・ハドリアヌス・正親。
 すべての属州を自分で回ろうとしたその熱意は、他人にモノを任せられないワンマンの裏返しのような気もする。そのワンマン性の果実としてのパンテオンでもあるわけだが。
 そしてうっかりの粛清もあったりしたが、まだ元老院との確執もあまり見られない。次巻でその辺は描かれるのかな。
 まあこのワンマン皇帝なら元老院と喧嘩するのもうなずける話ではある。

紹介

 承前ハドリアヌス
 前にクラウディウスは13年の激務に疲れ果て死んだと評されたが、彼に与えられたのはその倍近い治世だった。最期まで偉大で在り続けた皇帝は心も身体もボロボロになって死ぬ。
 次代のアントニヌス・ピウスは23年も地位にあったにも関わらず記述はあっさり。誰からも慕われ、落ち度のない慈悲深き皇帝。
 トラヤヌスといい彼といい、本当に偉大な人は逆に歴史家を困らせる。

書誌情報

著者:塩野七生
タイトル:ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀
出版社:新潮社
出版年:2000.9
備考:初版では第9巻。新潮文庫化時に24,25,26巻に分巻。


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