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【小説】仁木英之「レギオニス 興隆編」:戦国時代

レギオニス 興隆編 (中公文庫)

レギオニス 興隆編 (中公文庫)

「母上の言葉がなければその思いに至らなかったのは愚かである。此度のこと、責は林新五郎、柴田権六両名にあると厳しく𠮟りおく。追って沙汰があるまでは表立ったことをせず、己を慎んでおれ」
 言い終えると次に権六に目を向けた。
「お前は父の信も厚く、勘十郎を任されながら正しき道を示すことができなかった。弟の側にいてはまた道を誤らせることになるやも知れぬ。今後のことをよく思案せよ。次に誤れば許さぬ」
 続いて罰を言い渡されるのかと思っていたら、話はそこまでだった。

データ

主人公:柴田勝家
主な歴史人物:毛受惣介(勝照)、織田信勝織田信長林秀貞、佐久間盛重、木下藤吉郎
時代背景:室町時代(戦国時代)
 天文19年(1550年)年夏 -永禄3年5月19日(1560年6月12日)

紹介

 尾張国愛知郡下社村(現・名古屋市名東区)の小土豪である柴田勝家は安祥城での負け戦で立てた武功によって、主君の織田信秀から三男の信勝の傅役に任じられた。勝家は身の丈に合わない抜擢に戸惑いながらもその命に服するが、のちのち跡目争いに巻き込まれるのではないかと一抹の不安も感じていた。
 織田弾正忠家の勢力を飛躍させた「尾張の虎」織田信秀の早すぎる死は、勝家が心配したとおりに嫡男の信長と母・土田御前の支持を得た信勝の争いをもたらした。信長の治世はそこそこうまく回り始めていたが、荒子城(現・名古屋市中川区)主の四男に過ぎない前田利家や、素性の知れない滝川一益などの小身者を側近く使い、それに不満を持った旧来の家臣たちが信勝に心を寄せたのである。ついに信長の第二の家老であった平手政秀が信長と対立して腹を切る事態が起こると、弾正忠家の主家にあたる織田大和守信友や、信長の第一の家老として付けられたはずの林秀貞も反信長の旗幟を明らかにした。
 ついに信勝は弾正忠家の当主を僭称し、信長との決戦に臨む。戦闘経験に乏しい信勝は、勝家を総大将として全軍の指揮を任せることを表明した。兄弟の争いに自ら出馬しない信勝に疑問を抱きながらも勝利を確信して当たる勝家だったが、信長の鮮やかな采配の前に完敗を喫してしまう。
 勝家と共に信長の前で許しを請う信勝だったが、敗戦の責を家臣たちにひっかぶせ、その姿は見苦しく敗北を認めない態度を顕わにしていた。土田御前のとりなしで信勝の一命は許されたが、信長は「傅役として弟に二度と道を誤らせるな」と勝家に厳命した。

 桶狭間の戦いで鮮烈なデビューを果たした信長だが、そこに至るまでには同族間での血みどろの権力闘争を勝ち抜いてきて尾張統一を果たしている。あまり描かれることはないが、その間に何人もの織田姓の同族を手に掛けており、その中でも最大の敵が実弟の織田勘十郎信勝だった。
 タイトルの「Legatus legionis」はラテン語で軍団長を意味しており、のちに織田家北陸方面軍司令官となる柴田勝家の視点から、若き日の信長と織田家の軍団長となる若者たちの戦いを描いている。
 織田家の筆頭家臣であり、信長死後の主家乗っ取りを画策する羽柴秀吉の野望を阻もうとする忠臣として描かれることが多い柴田勝家だが、彼は信長の弟の信勝に与して信長に謀叛を起こした前科がある。一度は信勝の軍を率いて信長と刃を交えて敗れ、それにも懲りずに再び謀叛を起こそうとした主君を信長に売り、その死を招いた実績がある。
 その十字架を背負いながら、勝家は織田家の中でどのように自分の位置を占めるか試行錯誤を続けるのだった。

時代設定

物語の冒頭は水野信元が今川氏に寝返った天文19年(1550年)年の夏。
桶狭間の戦いが永禄3年5月19日(1560年6月12日)。

書誌情報

著者:仁木英之
タイトル:レギオニス 興隆編
出版社:中央公論新社
出版年:2018.10
備考:

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