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【小説】平岩弓枝「獅子の座」:室町時代

獅子の座―足利義満伝 (文春文庫)

獅子の座―足利義満伝 (文春文庫)

 自分にとっての女は、玉子一人なのだと義満は気がついていた。
 玉子の持つ清冽さに自分は心惹かれている。
 幼い日から、自分に注がれていた玉子の情愛には、いつも捨て身で、おのれを忘れるものがあった。玉子の懐の温かさは、義満にとって母の愛であると同時に女の愛であった。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:足利義満
主な歴史人物:玉子(細川頼之夫人)、細川頼之佐々木導誉赤松則祐斯波義将二条良基三宝満済世阿弥
時代背景:室町時代南北朝時代
 北朝の延文3年8月22日(1358年9月25日) - 応永15年5月6日(1408年5月31日)

紹介

 細川頼之とその若妻・玉子は悲しみに沈んでいた。10日前に生まれた我が子は死産であり、玉子の張った乳を吸うべき者はどこにもいなかった。折しもその時、将軍・足利義詮の側室・紀良子は身籠っており、もし男子が生まれたなら、玉子が乳人となるようにというのが将軍の母である赤橋登子の望みであった。かくして良子は男子を出産し、玉子は悲しみが癒えぬままにその子の乳人として出仕することとなった。
 将軍の子・春王は孤独だった。並みいる群臣たちは心を通わす相手とはならず、将軍たる父母の愛情を受けることが出来ずに育った。唯一、乳人の玉子だけが肉親らしい愛情を注いでくれた。元服した春王改め足利義満にとって、玉子と過ごした日々があまりにも特別なものになりすぎた。
 父・足利義詮の死を受けて3代将軍となった義満は傍若無人な最高権力者として、邪魔な大名たちを叛乱せざるを得ない状況に追い込んで叩き潰していく。その権力は朝廷にも及び、天皇の権威さえも脅かしていく。
 しかし、栄華の絶頂に立ってもなお、決して手を出すことが出来ない乳人玉子への純粋な恋情に義満の心は乱されていた。その心を埋めるものとして、能楽師世阿弥と貴族の子・満済という二人の男がいた。
 義満の歪んだ愛情を受け止める二人だが、技術の粋をもって舞うことだけが存在意義の世阿弥と違って、満済は朝廷に仕える貴族だった。義満が天皇の座に近づくにつれて満済は揺れる。

 王者となることを定められて生まれた足利義満。唯一の恋人である乳人以外の誰を信じることもなく、ひたすら奸智を滾らせて諸大名を陥れ、強大な権力と傲岸さで天皇貴族を跪かせ、だれもみたことのない高みへと登った。最近では否定されがちな皇位簒奪構想を中心に持ってくることで足利義満という人間の気宇の壮大さと、癒やしようもない孤独をよく描き出している。

時代設定

足利義満が誕生した北朝の延文3年8月22日(1358年9月25日)。子を失った細川頼之と妻の玉子が乳人の召出しに応じるところから始まる。
義満の死が応永15年5月6日(1408年5月31日)。エピローグに触れられる満済の死が永享7年6月13日(1435年7月8日)。

書誌情報

著者:平岩弓枝
タイトル:獅子の座 : 足利義満
出版社:中央公論新社
出版年:2000.10
備考:

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表題短編『バサラ将軍』は足利義満と後円融上皇の相克が主題となっている。
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