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【小説】井上靖「後白河院」:平安時代

後白河院(新潮文庫)

後白河院(新潮文庫)

信西入道ともあろうものが、大和で政変を聞いた時、信頼の天下がそう長いものでないことぐらいは充分承知していたであろうと思います。それでもなお自らの生命を断つ気になりましたのは、自分の亡びを願う者が信頼以外にあるということに気付いたからではないかと思うのでございますが、いかがなものでございましょう。獄門にかけられた信西の顔は、そのように考えますと、凄まじいものでございました。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:後白河法皇
主な歴史人物: 平信範、健御前(建春門院中納言)、吉田経房、藤原兼実(九条兼実
時代背景:平安時代鎌倉時代
 永治元年12月7日(1142年1月5日) - 建久9年1月11日(1198年2月18日)

紹介

 公卿、皇室、身内が相食み殺しあい、その間隙を縫って武家が権力を奪い取った時代。その時代に治天の君であった後白河法皇(院)。源頼朝には「日本一の大天狗」と称され、老獪に立ち回った彼が、この混乱の時代をどのように見て、何をなしてきたのかを、平信範、健御前、吉田経房、藤原兼実という院の近辺に侍った4人の人物が回想する。

 天皇という存在は、一個の人間でありながら生まれてから死ぬ瞬間まで「個人」として扱われることはない。この世に生まれ落ちた瞬間から父天皇外戚のパワーゲームの駒とされ、絶えず誰かのトロフィーとして死ぬまで争奪の対象とされ、譲位してなおその扱いは続く。
 後白河法皇保元の乱から源平合戦という混迷の時代に生を受け、なおさらその政治的存在を示さなければならない立場であった。あくまで政治の対象で在り続け、しかしながら本質的には一個の人間であるという後白河院の陰影を4人の近臣たちの目を通して描く。
 近臣たちの語る後白河院の姿は様々で、語る人によってその印象は全く異なる。彼らの全員が、それぞれが見た院の一面を理解しており、彼らの全員が、院の本質を見誤っているのかもしれない。

時代設定

平信範の証言は仁安元年(1166年)。藤原兼実に語る形。永治元年12月7日(1142年1月5日)崇徳天皇の譲位から平治2年1月9日(1160年2月17日) の源義朝の梟首まで。
健御前の証言は治承5年(1181年)。仁安3年(1168年)の春、御前が宮仕えに上がるところから安徳天皇が誕生する治承2年11月12日(1178年12月22日)まで。
吉田経房の証言は元号が変わる文治元年8月14日(1185年9月9日)。安元元年6月1日(1177年6月28日)の鹿ヶ谷の陰謀発覚から文治元年に至るまで。
藤原兼実の証言は建久9年1月11日(1198年2月18日)。長寛2年(1164年)の夏に日記を書き始めてから証言当日に至るまで。

書誌情報

著者:井上靖
タイトル:後白河院
出版社:筑摩書房
出版年:1972
備考:

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