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【小説】堺屋太一「秀吉―夢を超えた男 1」:戦国時代

「あ、熱い」
 藤吉郎は、本当にそう叫んだ。織田信長の強く鋭い視線を受けた時、全身が強張るような衝撃を受け、眉間が火を当てられたように熱くなったのだ。
「神じゃ、信長様は神様じゃ」
 藤吉郎は、うわ言のようにそう繰り返した。
「急にまた何をいうてるねん、サル」
 横からがんまくが冷めた声をかけたが、藤吉郎はしばらく同じ呟きを繰り返していた。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:木下藤吉郎豊臣秀吉
主な歴史人物:織田信長丹羽長秀坂井政尚蜂須賀小六蜂須賀正勝)、木下小一郎(豊臣秀長
時代背景:室町時代(戦国時代)
 天文20年(1551年)4月 - 永禄9年9月25日(1566年11月6日)

紹介

 NHK大河ドラマ『秀吉』の原作。
 尾張国(現・愛知県)の農民の子・サル(豊臣秀吉)は商人をしてみても、武家に奉公にでてもどうもうまく行かない。親友のがんまくに誘われ、尾張の青年領主・織田信長と隣国美濃(現・岐阜県)の斎藤道三との会盟を覗き見しに行くが、それが運命の出会いの始まりだった。
 貧弱な肉体で抜きん出るような武勇もなく、農民出身で教養もない藤吉郎は知恵と銭を駆使して出世を掴み取るしかない。
 変わり者の青年領主織田信長、後に藤吉郎のライバルとなる秀才の浪人明智光秀、信長の最も忠実な家臣丹羽長秀、浪人衆「小屋の者」の鉄砲頭滝川一益に槍組頭坂井政尚、川並衆の頭領蜂須賀小六(正勝)。若き日の英傑たちが次々と藤吉郎の前に現れ、それらの仲間たちと切磋琢磨しながら、がむしゃらに戦国の世を生き抜く。

 通産省出身の堺屋太一は、ことあるごとに藤吉郎と織田家が置かれている立場を戦後日本と重ねて描写する。戦後の闇市から立ち上がり功成り名遂げる少年を、出世譚の象徴である豊臣秀吉に重ねるのは、堺屋自身の見てきた戦後日本の復興と高度経済成長へのノスタルジーもあるのだろう。いま現在からは想像もつかないような、明るく前向きな時代が日本にもかつてあったことを思い出させる。
 藤吉郎はその織田家の経済成長に乗り、トントン拍子の出世をするが、かつて藤吉郎を信長に引き合わせたがんまくはマルクス的な思想に目覚め階級社会の暗部に疑問を抱いてゆく。その構図もモーレツ社員と、学生運動家という戦後の社会と重なって見える。

時代設定

サルとがんまくの出会いが天文20年(1551年)4月。墨股城(現・岐阜県大垣市)築城の書状が永禄9年9月25日(1566年11月6日)。

書誌情報

著者:堺屋太一
タイトル:秀吉 : 夢を超えた男 1
出版社:日本放送出版協会
出版年:1995.12 - 1996.10
備考:初版は上中下三巻。文春文庫化時に4巻に分巻。

関連作品

本作が原作のNHK大河ドラマ作品。豊臣秀吉役は竹中直人。(1996年)

本作と同作者の秀吉の弟・豊臣秀長が主役の小説。
全一冊 豊臣秀長 ある補佐役の生涯 (PHP文庫)

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