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【小説】岡田秀文「応仁秘譚抄」:室町時代

応仁秘譚抄 (光文社文庫)

応仁秘譚抄 (光文社文庫)

(ああ、そういえば)
 かつて一度、勝元の誠意をうたがったことがあった。富子の男子が生まれたときだ。あの直観は正しかったと今は思わざるをえない。
(結局、予は)
 頼むべからざる人を頼み、信ずべからざるものを信じ、進むべからざる道を進み、踏み迷い、今日の混迷を招いてしまった。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:足利義視日野富子細川勝元足利義政
主な歴史人物:足利義尚山名宗全伊勢貞親日野勝光足利義材足利義稙
時代背景:室町時代 – 戦国時代
 寛正5年(1464年)晩秋 - 明応5年5月20日(1496年6月30日)

紹介

 将軍・足利義政の弟の義尋(足利義視)は、寺に入れられ僧としての人生を送っていた。しかし、ある日やってきた幕府管領細川勝元は兄の義政が自分を将軍の後継者に望んでいると伝えてきた。まだ若く、子ができることもあると考えた義尋は固辞するが、勝元の熱意に押されて還俗を決意する。
 しかし翌年、将軍後継者として振る舞っていた義視の恐れていた事態が起こる。義政の御台所・日野富子に男子が生まれたのである。足利将軍家に後継問題が起こるべくして起こった。
 歴史の奔流に振り回される足利義視日野富子細川勝元、そして将軍・足利義政の近習の視点から描いた応仁の乱の物語。それぞれの思惑が複雑に絡み合い、守護大名たちの争いもそこに加わってくることによって、将軍家の後継争いは取り返しのつかない混迷を深めていく。

 本作は各章で語り部を変え、同じ出来事を違った観点から語っていく手法を使っている。ただし「義視」、「富子」、「勝元」ときて、当然次の「義政」では足利義政自身の考えを見ることができるという読者の予想を、その近習を語り部にすることによって作者は裏切ってくる。そのため、義政の考えは一枚のフィルターを通してのみ語られることとなり、底知れない将軍の考えをすべて知ることはできない。
 誰もが受け身の対応者にならざるを得なかった混乱の時代に、独自の暗い美意識のもとに暗躍する将軍・義政の存在感が良い。黒幕的な足利義政は従来の感覚だと持ち上げすぎているという感もあるが、足利尊氏や義教といった権謀術数に明け暮れた将軍たちの子孫であることを考えたら、この淡白で非情な義政像もありだと思う。

時代設定

足利義視を義政の使者が訪れたのが寛正5年(1464年)晩秋。
日野富子が没したのが明応5年5月20日(1496年6月30日)。

書誌情報

著者:岡田秀文
タイトル:応仁秘譚抄
出版社:光文社
出版年:2012.5
備考:

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