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【小説】岩井三四二「銀閣建立」:室町時代

銀閣建立 (講談社文庫)

銀閣建立 (講談社文庫)

 墓場の死者たちを地獄の亡者に見立て、一段高いところにある西指庵を浄土とし、そこに遺骨を埋めることで、自分だけが浄土に行こうとしているのだ。
 上様ははじめからそのつもりで、この山荘を造ったのだろう。そして山荘全体を寺にして、自分ひとりだけの墓にするつもりだ。
 ──銭で浄土を買うつもりか。
 その身勝手さと、壮大な濫費ぶりに啞然とした。
 だが、腹は立たなかった。むしろ悲しくなった。建物にいくら万貫の富をつかい、何千人を使役しようと、浄土に行けるわけがない。むしろおのれの罪を重くするばかりではないのか。
 いや、そんなことは上様とてわかっているだろう。しかし、わかっていてもそうせざるを得ないのだ。死は、地獄は、誰にとっても恐ろしいものだから。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:番匠・橘三郎右衛門
主な歴史人物:足利義政
時代背景:室町時代(戦国時代)
 文明14年(1482年) - 延徳2年1月7日(1490年1月27日)

紹介

 応仁の乱で荒廃した京都に、将軍職を譲り大御所となった足利義政が山荘を作るという話が降ってわいた。建築場所に選ばれたのは戦災で焼亡した東山の浄土寺の跡地。京の大工たちは特需にわき、戦火を逃れて美濃(現・岐阜県)で働いていた番匠・橘三郎右衛門も公方御大工の父・右衛門に呼び出され再び京都の地を踏むことになった。
 東山山荘造営奉行の結城七郎によると、新しい山荘は浄土寺の墓地の跡に建てるという。奇妙な立地に首をひねりながらも、三郎右衛門は彼をよく思わない橘一門の大工たちや、他の大工一門たちとしのぎを削り山荘の造営に力を発揮していく。
 戦争の当事者でありながら、それを意に介さず贅沢三昧を続ける支配者。戦争に苦しみ、その上で支配者たちの贅沢のために搾取されつづける被支配者。贅沢の象徴たる豪邸を建築するためにいる公方御大工という仕事は、被支配者でありながらも支配者の歓心を買うために被支配者たちから搾取をする尖兵といえる。その矛盾に悩みながらも、目の前に横たわっている後世にまで残る大仕事に、三郎右衛門の心は踊っていた。

 後の世に慈照寺銀閣として知られる、足利義政の東山山荘の建築に関わった無名の職人たちの物語。大御所・足利義政と番匠の橘三郎右衛門という、通常であれば決して交わることのない二人だが、芸術の実現という目的のもとには手を携えることが出来た。似た者同士の二人が、民草たちだけでなく肉親さえも不幸に陥れながらも、芸術の力でこの世にかりそめの極楽を作らんと願った暗い共犯関係を描いている。
 大工一門の中での軋轢、他の大工集団との相克、予算不足や物資の手配などに汲々とする職業人たちの姿は今も昔も変わらない。

時代設定

 東山山荘の造営開始が文明14年(1482年)。足利義政の死去が延徳2年1月7日(1490年1月27日)。

書誌情報

著者:岩井三四二
タイトル:銀閣建立
出版社:講談社
出版年:2005.3
備考:

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