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【小説】真保裕一「天魔ゆく空」:戦国時代

天魔ゆく空

天魔ゆく空

「それがしにはもう、御屋形様の心根がわかりませぬ……。愉快とは思えぬ顔で、ただ愉快、愉快と口先で仰せられる。何ゆえこの時節に、遊戯されるばかりなのか。引き回される内衆も皆戸惑うばかりにござります……。」
「わしにもわからぬ。そもそも本意を語りたがらぬお方なのか。もとより本意などござらぬお方であったのか……。このままでは、芥と泡ばかりの川となろうな」
 孫七の言葉を借りて言うと、長忠が石の塊を丸呑みにでもしたような顔に変わった。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:細川政元
主な歴史人物:洞勝院、細川政国、香西元長、安富元家、赤松政則日野富子足利義材足利義稙)、足利義高(足利義澄
時代背景:室町時代(戦国時代)
 文明4年(1472年)春 - 永正4年6月23日(1507年8月1日)

紹介

 応仁の乱の直前、のちに東軍総帥となる細川勝元の嫡男として生まれた政元は、抜修験道にハマり、天狗の術を身に付けるために修行に明け暮れ、生涯童貞を貫いたとされる奇人。ただの変人ならかまわないのだが、細川政元は抜群の政治手腕を持ち、幕府将軍の首をすげ替え、政敵を排除し、半将軍とまで称される権力を確立する。そんな二面性を持つ彼の周囲で振り回された人々の眼から、稀代の変人の生涯を描く。
 政元は自分の出自を疑い、細川の一族の中でも自らが孤立しているのではないかと常に疑いながら育ってきた。その猜疑心は、家督を継いだ少年期に丹波(現・京都府)国人に拉致されたときに更に深まった。家臣たちが自分の命よりも細川家の安定を優先したからである。頭ではわかっていながらも、どうしても細川の家を信じることができない政元は、家の存続についてという難題にはどんどん悪手を打ってしまう。それは他の幕政の面では豪腕を発揮し、幕府権力を一身に集める姿とは対照的であった。

 近頃インターネット上では魔法半将軍などとよばれ、奇矯奇天烈なキャラクターが人気を博している細川政元。彼が「信長の野望・蒼天録」のPUKに鳴り物入りで登場したのはもう15年以上も前の事である。当時はほとんど何も知らない人物だったが、3人の養子を迎え、その養子に殺された事実まで含めて、戦国時代初期の英傑というオーラを放つ大人物に見えた。
 権謀術数を駆使して混迷の室町時代を泳ぐ細川政元の姿は、そのころのイメージのままの怪物然としていた。しかし、生まれに囚われて人の心を見ることが出来ず、自分の蒔いた種に足をからめとられて破滅していくさまからは、独善的な秀才の限界を見るようで悲しいものがある。歪んでしまった人格を守るため奇人変人の仮面を被りながらも、本来の政元には冷静に状況を見極めて判断を下す能力があった。その為政者としての資質がだんだん奇人変人という仮面に押しつぶされていく過程を見るかのようであった。
 関係ないけど、足利義教にしろ細川政元にしろ、比叡山を焼いたという事実をもってとかく織田信長になぞらえられがちなのは閉口する。

時代設定

細川勝元と聡明丸(政元)の会話が文明4年(1472年)春。細川政元の暗殺が永正4年6月23日(1507年8月1日)。

書誌情報

著者:真保裕一
タイトル:天魔ゆく空
出版社:講談社
出版年:2011.4
備考:講談社文庫化時に上下巻に分巻。

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