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【小説】伊東潤「叛鬼」:戦国時代

叛鬼 (講談社文庫)

叛鬼 (講談社文庫)

 ――好かぬ小僧だ。
 父景信の傍らに拝跪した景春は、反骨心に満ちた眼差しを、その少年に向けた。
 その時、景春と少年の視線がぶつかった。
 一瞬、たじろいだ後、少年は敵意をあらわにして、にらみ返してきた。
 その瞬間、何かが弾けるように生まれた。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:長尾景春
主な歴史人物:山内上杉顕定、扇谷上杉定正太田道灌、伊勢宗瑞(北条早雲
時代背景:室町時代(戦国時代)
 応仁元年(1467年)3月 - 永正11年8月24日(1514年9月22日)

紹介

 誰にでも気に食わない奴というのはいるものだが、そいつが累代の主君であるというのは、主従双方にとって不幸以外の何者でもない。
 関東管領山内上杉氏の家宰を代々務めてきた長尾家の次期当主・景春にとっては、隣国越後(現・新潟県)から主家に養子入りしてきた小僧・上杉顕定がそれであった。そしてまた、顕定にとっても景春が気に食わないのは同じ。互いに互いを嫌い合い、憎しみ合う二人の諍いは、やがて関東を揺るがす大乱になっていく。
 決定的となったのは、父・景信の跡を自分ではなく、叔父の景仲が継いだことだった。古河公方足利成氏を味方に引き入れ、顕定だけでなく扇谷上杉定正やその家宰の太田道灌まで巻き込んでしっちゃかめっちゃかの大騒ぎを巻き起こし、何度敗れ去っても景春は何度も何度も叛乱を起こして周囲を混乱の渦に巻き込んでいく。

 太田道灌足利成氏が活躍する応仁の頃から、北条早雲長尾為景といったおなじみの戦国武将たちが蠢く戦国時代までの関東地方が舞台。関東の戦国時代は近畿よりも早く訪れたというが、その中心で飛び回り、常に時代をぶっ壊す中心にいた長尾景春の不屈の闘志と節操のなさには感嘆する。莫大なカリスマがあるわけでもなく、掲げる大義があるわけでもない。おまけに戦争が下手で、戦えば連戦連敗ときている。そんな彼だが、なぜか古河公方も、今をときめく伊勢宗瑞(北条早雲)も一目置いて頼ってくるのが不思議である。
 最後に精も根も尽き果て、あれだけ憎んだ山内上杉顕定と和解するかと思いきや、もう一度憎しみに燃えて一悶着起こし顕定を敗死させるくだりこそ、叛鬼・長尾景春の真骨頂と言えるだろう。
 叛けるだけ叛き続け、結局何者にもなれなかった彼が嫌いにはなれない。大義よりも理性よりも私怨が勝る、そういう男がいるもんだ。

時代設定

冒頭の長尾景春上杉顕定の出会いが応仁元年(1467年)3月。長尾景春の死去が永正11年8月24日(1514年9月22日)。

書誌情報

著者:伊東潤
タイトル:叛鬼
出版社:講談社
出版年:2012.5

備考:

関連記事

本作と同作者による同時代を扱った作品。
本作にも登場した北条早雲が主人公。
長尾景春太田道灌ら本作の人物も登場する。
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