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【小説】和田竜「のぼうの城 下」:安土桃山時代

のぼうの城 下

のぼうの城 下

 だが、三成と吉継だけは笑わなかった。
 敵の勝利を痛快がっていた三成でさえ、なにか得体の知れぬ男を敵に回してしまったかのような心地がしていた。
「どう思う」
 三成は、おもわず吉継にきいていた。
「でくの坊と呼ばれ平然としておる男か」
 吉継は、深刻な顔でつぶやいた。
「果たして賢か愚か」

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:成田長親
主な歴史人物:甲斐姫石田三成大谷吉継長束正家
時代背景:安土桃山時代(戦国時代)
 天正18年(1590年)正月 - 天正18年7月16日(1590年8月15日)

紹介

 第139回直木賞候補作、第6回本屋大賞第2位。
 犬童一心樋口真嗣共同監督映画『のぼうの城』の原作。
 上巻で、豊臣軍の使者・長束正家の傲慢な態度と、戦功を立てたい一心の石田三成の挑発的な言動についキレてしまい、豊臣軍2万3千を相手に一戦交えることになってしまった忍城(現・埼玉県行田市)の城代・成田長親。純朴な怒りを包み隠さずに爆発させてしまった「のぼう様」に家臣たちも喝采を送り、領民たちも強い支持を表明する。
 かくして始まった忍城攻めだが、士気の高い成田軍に対して舐めてかかった豊臣軍は緒戦で大敗北を喫してしまう。意外な展開にむしろ燃えてきた三成は、かつて主君・豊臣秀吉備中高松城(現・岡山県岡山市)で行った奇策・水攻めをこの忍城で再現しようと言い始めるのであった。

 大勢力の軍を預かる大将様から見たら、僻地の小競り合いに過ぎないかもしれないが、守る側からしたら命がけの決戦である。忍城攻めを自分のパフォーマンスとして扱う石田三成と、命懸けで一世一代の大いくさとして立ち向かう成田衆とでは、そもそもの覚悟が違う。現代でも規模の経済で猛威を振るう大企業と協力し合って頑張る中小企業の物語など、形を変えてたびたび見られる構図だが、小よく大を制す物語は痛快である。
 最後の最後まで「のぼう様」成田長親という人物は、あほうなのか利巧なのかもよくわからないまま物語は終わるが、彼自身の意思とは関係なく、見る人によって理想の「のぼう様」という人物を映し出す鏡のような人物なのかもしれない。

時代設定

成田泰季が病死した天正18年6月7日(1590年7月8日)から天正18年7月16日(1590年8月15日)の忍城開城まで。

書誌情報

著者:和田竜
タイトル:のぼうの城 下
出版社:小学館
出版年:2007.12
備考:初版は1巻。小学館文庫化時に上下巻に分巻。

関連作品

野村萬斎主演の映画化作品。(2012年)

実は漫画化もしている。

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上巻はこちら
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平成28年度(2016年)大河ドラマ。第弐集で忍城の戦いが描かれる。
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