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【小説】和田竜「のぼうの城 上」:安土桃山時代

のぼうの城 上

のぼうの城 上

「いやなものはいやなのだ」
 長親は大喝して丹波の言葉をさえぎった。さらに、狭い納戸で息をつめる侍どもをぐるりと見回すと、再び吠えた。
「武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。これが人の世か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ」
 強きものが強きを呼んで果てしなく強さを増していく一方で、弱き者は際限なく虐げられ、踏みつけにされ、一片の誇りを持つことさえも許されない。小才のきく者だけがくるくると回る頭でうまく立ち回り、人がましい顔で幅をきかす。ならば無能で、人が好く、愚直なだけが取り柄の者は、踏み台となったまま死ねというのか。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:成田長親
主な歴史人物:甲斐姫石田三成大谷吉継長束正家
時代背景:安土桃山時代(戦国時代)
 天正18年(1590年)正月 - 7月16日(8月15日)

紹介

 第139回直木賞候補作、第6回本屋大賞第2位。
 犬童一心樋口真嗣共同監督映画『のぼうの城』の原作。
 武蔵国忍城(現・埼玉県行田市)主・成田氏の一族に、成田長親という武士がいた。縦にも長く、横にも太く、図体ばかりが大きいが、威圧感は全然ないし武芸の類はてんでダメ。のんきな性格で人が好いため、領民たちと交じって野良仕事にも精を出すが、あまりの不器用に逆に邪魔をしてしまう有様。そんな彼のことを、みんなは「のぼう様」と呼んだ。「でくのぼう」の「のぼう様」である。
 豊臣秀吉の軍中、寵臣の一人に石田三成という武士がいる。如才のない若者で、何をやらせてもそつなくこなすが、目立った武功だけがいまだなかった。そんな彼のことを、加藤清正福島正則のような腕自慢たちは小才子と蔑んだ。
 天正18年(1590年)正月、天下の大半を抑えた関白・豊臣秀吉は、次なる敵として関東の北条氏政・氏直の親子を選ぶ。そして、武功のない石田三成に箔を付けるため一軍を与え、忍城の攻略を命じた。

 意地というものにもいろいろとあるが、この「のぼう様」こと成田長親が貫きたかったものは、ごくごく単純な負けたくない、という意地だった。
 しかし、やる気はあっても(あるかどうかも微妙な線ではあるが)、武力も剛力も、胆力さえもない愚将・成田長親は、唯一の武器である人気のみで石田三成率いる2万3千の大軍に立ち向かう。
 石田三成大谷吉継綺羅星のような名将を相手に喧嘩を売ってしまった「のぼう様」を、どういうわけか家老たちも守り立てていき、領民たちでさえも彼に力を貸そうと協力する。そんななか、戦国最後の大戦・小田原攻めの中で起きた奇跡、忍城攻防戦の火蓋が切って落とされたのであった。

時代設定

冒頭の備中高松城(現・岡山県岡山市)水攻めは天正10年5月8日(1582年5月29日)より。
本編は秀吉が北条攻めの下知を下した天正18年(1590年)正月から、成田泰季が病死した天正18年6月7日(1590年7月8日)までで、下巻に続く。

書誌情報

著者:和田竜
タイトル:のぼうの城 上
出版社:小学館
出版年:2007.12
備考:初版は1巻。小学館文庫化時に上下巻に分巻。

関連作品

野村萬斎主演の映画化作品。(2012年)

実は漫画化もしている。

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平成28年度(2016年)大河ドラマ。第弐集で忍城の戦いが描かれる。
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