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【小説】司馬遼太郎「殉死」:明治時代

殉死 (文春文庫)

殉死 (文春文庫)

 死は自然死であってはならないという、不可思議な傾斜が乃木希典においてはじまったのは、よほど年歴がふるい。かれは最後にその意思的な死を完成させるのだが、むしろこの傾斜はかれの生きつづけてゆく姿勢を単純剄烈にささえていたともいえるのではないか。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:乃木希典
主な歴史人物:児玉源太郎明治天皇、乃木静子
時代背景:江戸時代(幕末) - 明治時代
 明治4年11月23日(1872年1月3日) - 大正元年(1912年)9月13日

紹介

 NHKドラマ・『坂の上の雲』の原作。
 二百三高地の英雄、あるいは愚将。乃木希典大将の生涯を、半分小説、半分評論の入り混じった司馬遼太郎のいつものスタイルで炙り出す一作。『坂の上の雲』では、主人公の秋山兄弟がほとんど登場しないにもかかわらず膨大な分量を割いて旅順(現・中華人民共和国遼寧省大連市)攻防戦を描いたが、それでも書き足りないと司馬は本作を執筆した。この将軍に対する司馬遼太郎の好悪を超えた思い入れのほどがうかがえる。

 乃木大将といえば強烈な忠臣、神=天皇の信奉者というイメージであったが、いささか違うらしい。後世林立するような天皇の狂信者ではなく、むしろ天皇と人としてつながり仕えた数少ない郎党であったと司馬は見ている。
 前半では軍人と言うにはあまりにも力不足、そしてサムライでありすぎた彼が、いかに旅順という近代要塞に立ち向かったか、そして後半では一種異様ともいえる精神世界を築き上げた乃木希典という人物を人格、経験、そして彼がうけた教育と彼が施した教育の面から解き明かし、その極致として明治帝への殉死を選ぶに至った心理を分析している。
 人を率いる大将としての資質は戦争指揮の巧さや知略の回転ではなく、人としての器が試されると言われる。はたして乃木の資質とはどのようなものだったのか。自分を律し、あくまでも清廉に暮らした彼の人生の価値は、この一冊を読んでさらにわからなくなった気がする。
 歴史上の人物であった乃木大将がリアルな人間として現出する司馬遼太郎の力量はさすがのものだが、それでも明治天皇の郎党として死に臨む乃木希典と、その死に付き従う静子夫人の心理は、現代人の私には想像を絶するものだった。

時代設定

乃木希典が陸軍少佐に任官されたのが明治4年11月23日(1872年1月3日)、殉死が大正元年(1912年)9月13日。

書誌情報

著者:司馬遼太郎
タイトル:殉死
出版社:文藝春秋
出版年:1967
備考:

関連作品

司馬がこれ以前に書いた、日露戦争を扱った小説。4巻から6巻で旅順攻防戦が描かれる。

本作品が原作の一つとなっているNHKドラマ。第三部では2話を費やして旅順攻防戦が描かれる。乃木希典役は柄本明児玉源太郎役は高橋英樹。(1979年)


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