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【小説】吉川英治「黒田如水」:安土桃山時代

黒田如水 (角川文庫)

黒田如水 (角川文庫)

 沼の底へ降りて来たような暗さと冷たさである。太い柱と柱しか見えない洞然たる地下室を眺め廻して、官兵衛は、
「さて、ここか、俺の死所は」
 と、ようやく心の平らかなるものを同時に見出したここちがした。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:黒田官兵衛黒田如水
主な歴史人物:羽柴秀吉竹中半兵衛小寺政職織田信長荒木村重
時代背景:室町時代(戦国時代)
 天正3年(1575年)6月 - 天正9年(1581年)

紹介

 播磨国(現・兵庫県)の名門・赤松氏の庶流ではあるものの、戦国の世では織田と毛利に挟まれた弱小勢力でしかない御着城(現・兵庫県姫路市)主・小寺家。その家老として生まれた黒田官兵衛が、織田家との盟を結ぶために岐阜に赴くところからはじまる。そこで出会った羽柴秀吉と、軍師の竹中半兵衛の人格に惚れてしまったのが彼の運の尽き。黒田家ははたして羽柴に仕えているのか小寺に仕えているのか、周りの人間にもよくわからなくなってきたところで、播州の喉元にある摂津伊丹城(現・兵庫県伊丹市)の荒木村重が、主君・織田信長に反旗を翻す。さらにそれに呼応して官兵衛の本来の主君・小寺政職まで反旗を翻した。絶体絶命の危機になんとか荒木と小寺を説得しようと奔走する官兵衛だが、伊丹城に入ったところで、捕らえられ幽囚されてしまう。一方、使者に送った官兵衛が帰ってこないことを怒った信長は彼が荒木方に寝返ったと決めつけ、人質として預かっていた官兵衛の子・松千代を処刑するように言い渡す。

 黒田如水とのタイトルとは裏腹に、本編は彼がまだ黒田官兵衛を名乗っていた若き日に起こった荒木村重の謀反と、有岡城(本書では伊丹城)への幽囚の顛末記が主。士は己を知る者のために死すとはよくいうが、有岡城幽囚の顛末は何度読んでも、これだけ酷い目にあわされたのなら、いくら謝られたからって信長のことは嫌いになるよなあと官兵衛に同情してしまう。自分は熱い忠義をもって虜囚の辱に耐えていたのに、まったく信用されずに息子の松千代まで殺されているのはあんまりである。一方、堅く自分のことを信じ続けてくれた秀吉と竹中半兵衛とは厚い信頼で結ばれ、互いに信じあう関係になることも理解できる。
 黒田官兵衛もこれだけの酷い目に遭ったのだから、のちに憎き信長が本能寺の変で横死した時も「御運が向いてきましたな」などと空気の読めない発言をしてしまい、主君・秀吉にドン引きされてしまうこともむべなるかなである。策士が策に溺れるところは荒木村重の説得に失敗した時から変わっていない。

時代設定

天正3年(1575年)6月の御着城での評定から、天正9年(1581年)まで。

書誌情報

著者:吉川英治
タイトル:黒田如水
出版社:朝日新聞社
出版年:1943
備考:

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