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【小説】吉川英治「上杉謙信」:戦国時代

上杉謙信 (角川文庫)

上杉謙信 (角川文庫)

 謙信はすでに、迷いなく、ここへ邁進して来つつあるのに信玄は、事態の直前に、味方の布陣を更えなければならないという必要に――つまり後手に立たされてしまったのである。
 若輩謙信に、いやしくも用兵の神智と技術において、この一手を見事出鼻にさし込まれた信玄としては、その老練な分別や、最後の必勝を信念しても、人間的に、
「小さかしき謙信の振舞」
 と、感情を怒らせずにはいられなかった。その分なら目にもの見せてくれるぞ――との覇気に満々たらざるを得なかったのである。

データ

ジャンル:歴史小説
主人公:上杉謙信
主な歴史人物:斎藤下野(斎藤朝信)、鬼小島弥太郎、武田信玄、初鹿野伝右衛門
時代背景:室町時代(戦国時代)
 永禄4年(1561年)正月 - 元亀元年(1570年)

紹介

 越後の龍・上杉謙信と甲斐の虎・武田信玄。両者は北信濃(現・長野県北部)の領有を巡り、幾度も川中島(現・長野県長野市)で激闘を繰り広げた。今作は上杉謙信と題してはいるが、全編のうちほとんどは第四次川中島合戦の勃発から終戦までの短い期間を描いている。
 宿命のライバルだった上杉家と武田家の間につかの間の和議が成立していた永禄4年。武田家が不穏な動きを見せているという情報が入ったため、謙信は斎藤下野(斎藤朝信)を使者として甲斐国躑躅ヶ崎館(現・山梨県甲府市)に派遣した。武田信玄の高圧的な態度にもひるまず返答をした斎藤下野一行だったが、謙信が出陣したとの報が甲斐に届いたことにより囚われの身となってしまう。

 斎藤下野親子の忠誠心や、上杉謙信の義心と武田信玄の狡猾の対比など読みどころは多くあるが、それらのすべてが第四次川中島合戦に終着していく純粋な戦争小説。
 物語が進むにつれてどんどんとページをめくる手が加速してゆき、謙信と信玄が邂逅するシーンでその高揚は最高潮を迎える。個人単位での戦闘描写がうまい作家は沢山いるが、大軍がぶつかり合う戦争を描写して、しかもスピード感を失わないのはさすがは吉川英治。第四次川中島合戦での上杉謙信の神憑り的な用兵を細部に渡り描写していながら、読書の邪魔をすることなく疾走感をもって読ませることに成功している。

時代設定

永禄4年(1561年)正月から永禄4年9月10日(1561年10月18日)の第4次川中島合戦までが大半を占める。
エピローグに当たる塩留の話は永禄11年(1568年)から元亀元年(1570年)。

書誌情報

著者:吉川英治
タイトル:上杉謙信
出版社:朝日新聞社
出版年:1942
備考:

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本作と同じく第4次川中島合戦を、山本勘助の視点から描いた作品。
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